田中 佐次郎(TANAKA SAJIRO)

八十八歳を迎えた今も、佐次郎は見る者を魅了する茶陶を作り続けている。佐賀県唐津市山瀬――安土桃山時代から江戸時代にかけて古唐津を焼いた窯跡が残る地――に拠点を構える彼の制作環境は、歴史の深みと自然の息遣いに満ちている。山あいの澄んだ空気が漂う工房では、周囲の景観に自然の働きを強く感じることができ、この清冽な空気は、彼の創作に宿る静かな緊張感と重なり、佐次郎自身の歩みをも映し出している。

佐次郎の作品は、定型にとらわれず、土との対話の中から形が自然に立ち上がる、彼独自の美意識に根ざしている。最終的には火との真摯な対峙を経て命が吹き込まれ、作品となる。土を成形する際の体の動きや呼吸のリズムが作品に刻み込まれ、観る者を惹きつける存在感を放つ。

現代の陶芸家がガス窯や電気窯を用いる中、佐次郎は今もなお薪窯にこだわり、その姿勢を崩さない。田中は長年にわたる惜しみない努力によって自らのスタイルを築き上げ、年齢や経験を超えた境地に達している。そこに残される作品は、まさに「今を生きる」証であり、静かで力強い表現として存在している。

陶歴

1937福岡県北九州市に生まれる
1960鎌倉市円覚寺塔頭佛日庵、高畠宗光禅師に座禅に初める
1965縄文・弥生土器の発掘調査、手びねり、野焼きを始める
1971越前永平寺に座禅修行始む
古唐津窯跡発掘調査、作陶開始
1972福岡市別府表千家茶乃湯師、花田真澄先生に茶道を習い始める、高原竹渓先生に南画を習う
1975永平寺に於て山田霊林貫主に在家得度、禅戒法月居士号血脈を賜る
当寺副監院北野良道禅師に「陶禅一如」の公案を授かる
唐津市漢学者斎藤素秋先生に二十数年漢詩を習う
唐津市半田常楽禅寺、村上文雄和尚の境内に登り窯築窯
1979名古屋市小幡、加藤唐九郎先生に禅談人生観を学ぶ。その後二回訪問して薫陶を得て今日に至り驥尾に付す
1980しぶや黒田陶苑にて初個展
1987古窯地山瀬に登窯移築、現在に至る
1997韓国各地に点在する高麗茶碗古窯地の発掘調査、慶尚南道山清にて作陶
2003韓国蔚山市の山間に半地上六連房式登窯「亀山窯」を築窯在住六年
2007美術評論家茶師、林屋晴三先生に師承、氏の新宿柿傳に於て世俗間の茶田を耕して奇趣卓抜とした禅茶の妙味を取入れて最晩年に十年間五十八回の茶会に四十回参席して残瀝を身に受けて今日に渡る
2009韓国ソウル、ロッテ百貨店にて個展
2014スイス、ジュネーブにて個展
スイス・日本開港百五十周年記念田中佐次郎作陶展
中曽根康弘元首相より推薦状を賜る
2016ニューヨークにて「人間国寶石黒宗麿・凡工田中佐次郎二人展をニューヨークJoan B Mirviss Ltd.にて開催
2019しぶや黒田陶苑五十周年記念「田中佐次郎 自撰五十」開催
2023NHKラジオ番組宗教の時間三十分「陶禅一如」を語る
2024ニューヨーク・日本クラブにて「田中佐次郎個展・縄文から未来へ」開催

収蔵

  • 国立工芸館
  • マーガレット・サッチャー英国元首相
  • 中曽根康弘元首相
  • スイス・ジュネーブ日本人学校